アフリカ小僧、隠居日録

定年後の日常を、隠居所で気ままに書いてるブログです

「星の王子さま」は大人の本

 サンテグジュペリの「星の王子さま」は、大人の本だ。絵本と勘違いして、子供に買い与えても、多くの子供は興味を示さない。

 

 子供部屋に放置されたまま、運よく15年、20年捨てられずにいれば、「星の王子さま」は大人になったかつての子供に大事なことを教えてくれる。

 

 今や大人になった彼、彼女は、愛、人生、友情、お金、職業など、生きてゆくのに必要な様々な知恵をこの本から学ぶことになる。

 

 小僧が初めて「星の王子さま」を読んだのは、19歳の時。当時通っていた飯田橋にある「東京日仏学院」というフランス語の学校で、教材としてこの本に出会った。フランス人の女性が先生だった。夜間の授業だったので、生徒は全員大人だった。

 

 この環境が良かったのだと思う。小僧は「星の王子さま」を退屈な本だとは思わなかった。それどころか、大人になりかけで、かつ社会の中でどうすれば自分の居場所を作れるのかわからなかった小僧に、この本は多くのことを教えてくれた。

 

 たとえば、友達の作り方。「星の王子さま」には、砂漠のキツネが登場し、キツネが王子に生きてゆくのに必要な知恵、友達を作るとはどういうことなのか、教えてくれる。

 

 「毎日、一歩ずつ近づいてゆくんだ。そして、二人の間にいつか綱が張られるようになる。友達になるというのは、そういうことなんだよ」

 

 と、フランス人の先生は、きれいなフランス語で説明してくれたような気がする。砂漠で行われた王子さまとキツネの対話が蜃気楼の向こうから聞こえてくるように、学び始めたばかりのフランス語がネイティブの先生の唇から小僧の耳に途切れ途切れに届いていた記憶がある。

 

 不器用で友達作りが苦手だった小僧にとって、目から鱗が落ちるような授業の一コマだった。あれから50年、今も友達作りが苦手な小僧だが、キツネの言葉のおかげで、なんとか持ちこたえているような気がする。

 

 

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