アフリカ小僧、隠居日録

定年後の日常を、隠居所で気ままに書いてるブログです

星の王子さまとバオバブ

 バオバブとは、アフリカの一部の国で見られる樹木の名前だ。「星の王子さま」には、このバオバブが登場する。

 

 サンテグジュペリがヨーロッパから郵便や書類を運んでいた西アフリカのセネガルでは、国を象徴する樹木と言ってもいいほどセネガル人の暮らしや感性に密着した樹木である。

 

 バオバブにはギクシャク、ゴツゴツと横に広がるものもあれば、まっすぐ直線的にスーと伸びるものがある。セネガルのバオバブは前者であり、マダガスカルのバオバブは後者である。

セネガルのバオバブ

 

 マダガスカルのバオバブ。

 

 「星の王子さま」でバオバブはその強い生命力と成長力によって、王子さまの星を破壊してしまうかもしれない恐ろしい生き物として描かれている。

 

 「バオバブは手遅れになる前に始末しないと、後からではもう退治できなくなる。星全体に広がってしまうのだ。その根は惑星を突き抜ける。小さな星にバオバブがあんまりたくさんはびこると、星は壊れてしまう」(池澤夏樹訳、集英社版「星の王子さま」26ページ)

 

 バオバブの強い生命力に関する意見には小僧も同感だが、退治すべき恐ろしい生き物という見方には違和感を感じる。

 

 小僧はセネガルに三年暮らし、セネガルの人々がいかにこのバオバブを大事にしているか理解した。小僧の友人たちは、バオバブの実から作る白い粉末は整腸作用があるし、葉は料理に混ぜれば精力増進の効果があると教えてくれた。

 

 セネガルのバオバブは見た目は悪いが、現地の人々に力を与えてくれる大事な樹木なのだ。

 

 セネガルは砂漠の国ではないが、サハラ砂漠に隣接する雨の少ない乾いた土漠(どばく)地帯だ。そんな厳しい自然環境の中で何年もの間生きてきたバオバブには、乾季(かんき)でも自らの中に水を蓄えておける優れた能力があるのだろう。

 

 セネガルでは水は命だ。並はずれた保水能力を持つバオバブは、セネガルの人にとって乾いた土地でも生きてゆけるというメッセージを放つ樹木である。セネガルでは、バオバブは生命力の象徴と言っても過言ではない大事な樹木なのである。

 

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