アフリカ小僧、隠居日録

定年後の日常を、隠居所で気ままに書いてるブログです

映画監督、鈴木清順の「わが家の夕めし」

 朝日文庫「わが家の夕めし」は昭和の貴重な記録である。自宅での夕飯という、誰もが無防備になる瞬間の素の顔を見事に捉えている。そして、主人公の背景には昭和の暮らしが見て取れる。

 

 たとえば、映画監督、鈴木清純(すずき せいじゅん)。この時、監督は映画会社を追われ、無職となり一人でネコと一緒に夕飯を食べている。奥様は暮らしを支えるため、鈴木の夕飯を用意して仕事に出かけて留守である。

 

「刺し身の半分は猫が手伝ってくれるのだよ、おわかりかい女房どの。ウフフ・・・」せっかく奥様が用意してくれたお刺身の半分は猫が食べ、監督はもっぱら「さあ、もう一杯」手酌で酒が進むようだ。(朝日文庫「わが家の夕めし」66ページと68ページから引用)

 写真を見てみよう。食卓代わりの電気炬燵、炬燵の上には、たばこのロングピース、キッコウマンの醤油さし、監督の横には練炭火鉢、後ろの棚にはダイヤル式の黒電話。昭和46年(1971年)、懐かしい昭和の情景だ!

 

 昭和は今より映画監督が注目された時代だったと思う。この本には、鈴木清純監督の他にも、谷口千吉監督と八千草薫さん、新藤兼人監督と乙羽信子さん、大島渚監督と小山明子さん、篠田正浩監督と岩下志麻さんが登場している。

 

 昭和が懐かしくてたまらない人には、貴重な本だと思う。

 

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