アフリカ小僧、隠居日録

定年後の日常を、隠居所で気ままに書いてるブログです

八千草薫さんの夕飯と映画「アサンテサーナ」

 八千草薫さんが特別出演し、八千草さんのご主人、谷口千吉氏が監督した映画「アサンテサーナ」(1975年)は長い間、DVDなどで見ることが出来ない、「幻の映画」だった。最近、この映画をユーチューブで見ることが出来ると知って、小僧はびっくりした。

 

 映画の主人公は、タンザニアに派遣され現地の村で悪戦苦闘する青年海外協力隊員だ。八千草薫さんが演じるのは、協力隊員の面倒を見る現地駐在員の妻である。容易に想像できるが、八千草薫さんは優しく、信頼できる、美しい夫人を演じている。いや、演じているのではない。八千草薫さんとはそういう人なのだと誰もが思うのである。

 

首都ダルエスサラームから遠く離れた村で発熱し倒れた隊員を訪ね、お粥をつくって面倒を見る八千草薫さんではなかった、駐在員夫人。

 夫人はお粥をつくりながら、こう語る。

 「協力隊員はね、トンネルの真ん中を掘る人たちなの。トンネルの堀り始めや完成の時はマスコミや多くの人に注目される。だけど、隊員は誰も見ていない真っ暗なトンネルの真ん中の部分を黙々と掘る人たちなの」(小僧はグッときました)

 

 すると、寝ていた坂田と言う隊員が目を覚まし、こう言う。

 「奥さん、俺はそんな立派な人間じゃない。村人からよそ者と言われ、ちいさなことにこだわって・・・」う、うぎゃー!と嗚咽する。坂田は村で孤立していたのだ。

 「坂田さん、どうしたの?もう大丈夫よ」と、言いながら、夫人は坂田隊員の額にのせる冷やしたタオルを取り換えるのだ。

 

 昭和生まれの小僧だから感動するのだろうか?忙しい方は、映画の1時間29分10秒あたりから、ご覧ください。ここが一番のクライマックスだと思います。

 

 谷口千吉監督は、「アサンテサーナ」の制作で数千万円の借金を負う。関係者が自主上映会などで集めたお金を持参すると、監督は「その金は、協力隊のために使え」と言って、受け取らなかったと聞いたことがある。谷口千吉監督と夫人の八千草薫さんは、青年海外協力隊の恩人である。朝日文庫「わが家の夕めし」には、「アサンテサーナ」を制作する7年前のお正月の写真が載っている。

 

登山好きのご夫妻はお正月を山で過ごすことが多いので、久しぶりの自宅でのお正月と記事に書いてありました。(朝日文庫「わが家の夕めし」19ページと21ページから引用)

 このお正月から7年後、夫妻がアフリカのタンザニアに現地ロケに向かうとは、まだ誰も知らない穏やかな夕飯の写真である。

 

 

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