シナリオ作家の山田太一氏の訃報を、今朝、ネットニュースで読んだ。「ふぞろいの林檎たち」や「岸辺のアルバム」など、昭和の青春や家族の姿を鮮烈に描いた作品を残した作家だった。
小僧は彼の作品を映像で見たというより、シナリオで読んだ。シナリオを読むだけでハラハラ、ドキドキしたのを覚えている。とりわけ、「岸辺のアルバム」では、八千草薫さん演じる専業主婦が夫以外の男に惹かれていくシーンは、切なくて読むのがつらかった。夫役は小僧が大好きな役者、杉浦直樹さんだった。
「岸辺のアルバム」の舞台は小田急線の和泉多摩川駅周辺で、東京都狛江市だ。水害で戸建て住宅が多摩川に流された場所だ。濁流に流される主人公の住宅と崩壊寸前の家族の姿が重なる名場面がラストシーンだったと思う。しかし、杉浦直樹さん演じる夫であり、父親である田島謙作はじめ家族は人生の崖っぷちで踏ん張っていたように思う。感動的なシナリオだった。
小田急線は和泉多摩川駅から多摩川の鉄橋を渡れば、そこは神奈川県川崎市の登戸駅である。
山田太一氏はご家族とともに川崎市に住んでいたようだ。川崎市で子育てをし、ご家族によれば川崎市で亡くなられた由。小僧も川崎市民なので、より身近に感じる文化人だった。
一度、新宿の南口にある紀伊国屋書店で山田太一氏を見かけたことがある。ふさわしい場所でふさわしい人に巡り合ったと感じたことを覚えている。小僧は小心者で声をかけられなかった。
ご冥福を祈ります。合掌。